9月最初の日曜日に、とあるシンポジウムが東京で開催され、増田も参加しました。その日のパネリストの一人に、込山民子さんがいました。オンラインショップ関係者やSOHO関係者ならご存じの方も多い素敵な女性です。
さて、話はいったん去年の7月のとある日に逆上ります。その日、私はNPO法人キープラネット主催の「法人への道」と題するセミナーの講師を務める予定でした。が、折り悪く、大型台風が東京を直撃するという予報。延期か実施かを決めるため、主催者が参加予約者の意向を個別に電話で聞くことになりました。まず、一人め。その相手が込山さんでした。
彼女は「電車が止まっても参加します。歩いてでも会場へ行きます。もし、参加者が私一人なら、私一人のためにでも開催して!」と、答えたそうです。
主催者も私も、セミナー決行を迷う気持ちは、もうなくなっていました。
その頃の込山さんは、会社を設立したものの、自分は社長には向いていないのでは……と、悩んでいました。「いやだ。でも、やらないといけない」。そういうジレンマは、人間をひどく苦しめるものです。
私はそのセミナーで「法人化の検討の前に、まず、どういう仕事を、どういう規模で、どういう速度で進めるのかを考えてください。それを決める第一の要因は、市場動向でも常識でもなく、創業者自身の幸福感です。自分がどうあれば幸せなのかを認識することが、仕事のあり方を考える第一歩です」と訴えました。彼女に、言わんとすることが伝わるかどうかを気にしながら。
それから1年と2カ月が経ちました。
「私はお金を稼ぐ方法を考えるのはイヤだから、稼ぎたいならアンタたちが頑張れば、と社員に言っています(会場大爆笑)」。「えっ、なぜ社員がついてくるのか? 私に魅力があるから(会場大爆笑)」。「私は社長じゃないです。タレントです(会場大爆笑)」。どれもが、冒頭で記したシンポジウムでの、込山さんの発言です。業績も好調とのことでした。本当の自分を知り、それを臆さず表明できる人間にこそ、人も仕事もめぐってくる、ということです。
台風にも屈しない彼女の「自分探し」への思いは、もう、とっくに形になっていたのですね。ちなみに、この日のシンポジウムのテーマは、「女性起業家のための自分探し」でした。ひとりの女性起業家の成長に、拍手。
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