「純国産オオクワガタを育ててみよう!」。そんなうたい文句のチラシが朝刊に折り込まれてきました。幼虫、菌糸ビン、腐葉土、飼育ケース、説明書のセットで1890円。安い!かつては成虫で数十万円とも言われたのに。しかも、自宅まで無料で届けてくれるとか。一体こんな商売、誰がするの? 答えは、新聞屋さん自身なのです。なるほど。それなら折り込みも配達もお手の物。経営資源の有効活用事例ですね。
それにしても「黒いダイヤ」もずいぶん大衆的なお値段になったものです。恐らく画期的な繁殖技術が開発されたのでしょう。一方で、野性の個体は激減していると言われていて、相当のマニアでも捕獲実績がないそうです。少年時代、昆虫採集に明け暮れた私も、さすがにオオクワガタには一度もお目にかかる機会はありませんでした。ヒラタクワガタなら一度だけあるのですが。
三度の飯より昆虫採集、という少年期を過ごした人も多いでしょう。私も当時、大人たちから「ムシが好きなんだね」と、よく声をかけられ、そのたびに「ウン」と力強く答えた記憶があります。それで気をきかせた誰かが、「ファーブル昆虫記」をプレゼントしてくれました。でも面白くない。やっぱり、私にとってムシは、「読む」ものではなく、「捕まえる」ものだったからです。
そうなんです。私の昆虫採集の本当の動機は、クワガタを観察したり飼育したりすることではなく、発見に成功すること、捕獲に成功すること、そして、その技術の高さを友人たちに誇ることだったのです。
私は7月19日から合計20時間の独立講座の講師を務めています。この講座の中で、私は何度となく「起業動機」の重要性を訴えています。独り立ちしたいという「独立動機」も大事ですが、こういう事業をしたいという「起業動機」がないことには、独立できても、事業を続けていくことができないからです。
では、どんな事業を起こせばいいのか? そのヒントが子供時代、好きだったコトに隠されています。モノよりコト。モノだと、私ならクワガタ。これでは昆虫学者かブリーダーしか選択肢がありません。が、コトで考えると、「クワガタ」を「発見する」「捕獲する」「見せびらかす」というキーワードが出てきます。そこで「クワガタ」の部分に、違うモノを代入すればいいわけです。
情報を探して、社会という森を駆け回り、いいネタを捕まえて、それを本にしてみんなに「どうだ!」と見せびらかす。私の今の仕事です。そのワクワクぶりは、間違いなく、昆虫採集に出かけていく夏の早朝と同じ感触。むしろ、仕事は、春夏秋冬いつでもできるぶん、昆虫採集よりも楽しめる機会が多い!
何かを見つけ、捕まえ、見せびらかすのが好きな私は、だからオオクワガタを買いません。でも、何かを「育てる」のが好きな人には、お得なセットです。
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